リチウムイオン電池の劣化診断 ~急速充電時のデータから準リアルタイムで推定~(電気電子工学系 石田隆張)

リチウムイオン電池の劣化診断
~急速充電時のデータから準リアルタイムで推定~

整理番号:2016-049


研究者名: 石田 隆張(Takaharu Ishida)
所  属: 理工学部 総合理工学科 電気電子工学系 教授
専門分野: 電力系統解析、社会インフラシステム、デジタル放送、ビッグデータ分析の制御応用、蓄電池劣化分析、電気自動車の電力系統連系
キーワード: 電気自動車、蓄電池、充電負荷、スマート充電、充電アルゴリズム

研究概要

電気自動車(以下、EV)には大容量のリチウムイオン電池の搭載が必要です。この電池は劣化が進行するので、車両の安全上その度合いをリアルタイムに近い状態で診断する(以下、劣化診断)必要があります。劣化診断を行う方法は従来からあるものの、改善の余地があります。そこで、CHAdeMO(TM)注)方式で急速充電を行う際に、EVと充電器間で授受されるデータと、充電器側の電力データをもとに劣化診断を準リアルタイムで行う手法を開発しました。

  • 図1 急速充電時のEV、充電器、電力・通信ネットワークの関係

    図1 急速充電時のEV、充電器、電力・通信ネットワークの関係

    EV急速充電時に、EV中の情報をCANを介してEVSEに送信し、種々のデータを遠隔データベースに記録します(図1)。

  • EV充電回数が多くなるにつれて、定電流充電時の電圧の傾きが大きくなっています。これは内部抵抗が増加していて、劣化が進んでいることを示唆しています(図2)。
  • 電圧パターンマッチング法(図3)により、蓄電池の劣化診断を行うことが可能となります。

 

石田先生-図3

図2 充電時の電圧と充電時間の関係 時間経過による充電時の電圧変化

図3 充電プロファイルを用いた蓄電池劣化診断例

図3 充電プロファイルを用いた蓄電池劣化診断例

注):EVの急速充電方法の商標名で、EVの急速充電器間の通信方法と充電方法を規定

用語説明 EV: Electric Vehicle(電気自動車)、CAN: Controller Area Network(情報ネットワークの名称)、EVSE: Electric Vehicle Supply Equipment(充電器)

応用例・用途

  • リチウムイオン蓄電池の劣化度合いをEV急速充電時に準リアルタイムに診断することで、蓄電池の交換時期を見極めることが可能となります。