マグネシウム合金溶接部の疲労強度特性
~溶接による疲労強度低下を抑える~
整理番号:2016-033
研究者名: 山本 晴生(Haruo Yamamoto)
所 属: 理工学部 総合理工学科 機械工学系 教授
専門分野:機械材料・材料力学
キーワード: マグネシウム合金、TIG溶接、疲労強度
研究概要
地球温暖化や環境問題への対策が急務な状況にあり、輸送機器の軽量化による環境負荷の低減が重要な課題である。軽量化を考慮した実用性のある材料として、チタン、アルミニウム、マグネシウム等の合金があり、疲労強度特性について研究している。
マグネシウム合金注1)は、輸送機器の部品として使われてきたが、構造用材料への用途拡大も考えられており、溶接部の疲労強度も把握することが重要になってきている。ここではマグネシウム合金AZ31注2)を使用したTIG溶接注3)部の疲労強度特性を評価した結果について説明する。
- 平滑材(Smooth Specimen)と溶接継手材(Welding Specimen)の変位一定型平面曲げ疲労試験機による疲労試験を行い、平滑材で68 MPa、溶接継手材(余盛り除去)で60 MPaの疲労限度となり、溶接しても約13%の低下に留まることが明らかとなった(図1)。
- 余盛りが存在すると溶接止端部で疲労き裂が発生し、疲労強度が減少することが明らかとなった。
- 疲労試験での破断面を観察したところ、表面き裂の発生部位は溶接部または熱影響部から発生していることが明らかとなった(図2)。
注1):比重は鉄の1/4、アルミニウムの3/4と軽量、比強度(強度/比重)も他の金属に比べて高く、再溶融してリサイクルする際にも省資源の観点から優れている
注2):アルミニウム(Al)を3%と亜鉛(Zn)を1%含むマグネシウム合金
注3):Tungsten Inert Gas溶接、電極にタングステンを使用し、溶接部を 不活性ガス(アルゴンガス等)で覆いながら溶接する
応用例・用途
- 軽量且つ比強度が高いマグネシウム合金は、溶接接合を含めた構造用材料としての用途に応用可能である。
研究設備
- 疲労試験機、高速衝撃試験装置、落垂式衝撃試験装置、静的・動的ひずみ測定器