有機金属錯体による磁性体の創製 ~磁性ナノワイヤーとフェリ磁性体及びその特性~(生命科学・化学系 西條純一)

有機金属錯体による磁性体の創生
~磁性ナノワイヤーとフェリ磁性体及びその特性~

整理番号:2016-018


Nishijo

研究者名: 西條 純一(Junichi Nishijo)
所  属: 理工学部 総合理工学科 生命科学・化学系 教授
専門分野: 分子性磁性体、分子性導体
キーワード: 有機金属錯体、ナノワイヤー、フェリ磁性

研究概要

磁性を持つ有機化合物にエチニル基を導入し、金属アセチリドとすることで、磁性を持つナノワイヤーの作製にも成功しています。また、エチニル基を有する導電性化合物と環状化合物との新規なクロム(III)錯体を合成することにより、分子間で強い相互作用を有するフェリ磁性注1)体の作製にも成功しています。ここでは、これら2例を紹介します。

  • エチニル基を導入した有機磁性分子の銅(I)錯体を合成し、再結晶化することで、磁性を有するナノワイヤー(図1)を作製しました。ナノワイヤー状でも磁性を維持していることが明らかになりました。また、銀(I)錯体の場合は、ナノ粒子も一部副生しました。
  • エチニル基を導入したテトラチアフルバレン誘導体をクロム(III)に結合した錯体を新規に合成しました(図2)。中心金属としてクロム(III)を用いたことで、比較的大きなスピンをもつ安定な錯体が得られます。これを用いて作製した磁性結晶では、隣接する錯体との間でテトラチアフルバレン誘導体が二量体を組み、+1価の電荷が隣接分子間で非局在化し、隣り合う分子のスピンを非常に強く結びつけていることが明らかになりました。

注1):大きさの異なるスピンが整列することで、全体として大きな磁化を示す磁性体

図1 磁性有機化合物の銅アセチリドによるナノワイヤーと磁化率

図1 磁性有機化合物の銅アセチリドによる
ナノワイヤーと磁化率

図2 新規導電性磁性クロムイオン(III)錯体分子同士が一体化

図2 新規導電性磁性クロムイオン(III)
錯体分子同士が一体化

応用例・用途

  • 磁性を保持したナノワイヤーの迅速な開発が可能となります。
  • 安定なフェリ磁性体の迅速な開発が可能になります。