草木質バイオマスからの高効率エタノール生産技術の開発 ~Trichoderma reesei 変異によるセルラーゼ活性の改良~(環境科学系 田中修三)

草木質バイオマスからの高効率エタノール生産技術の開発
Trichoderma reesei 変異によるセルラーゼ活性の改良~

整理番号:2016-067


田中修三先生-顔写真

研究者名: 田中 修三(Shuzo Tanaka)
所  属: 理工学部 総合理工学科 環境科学系 教授
専門分野: 環境技術・環境材料、土木環境システム、応用微生物学
研究者HP: http://www.hino.meisei-u.ac.jp/es/staff/mizu-bio/
キーワード: リグノセルロース系バイオマス、糸状菌トリコデルマ、セルラーゼ、変異導入

研究概要

 食料と競合しないリグノセルロース系バイオマス注1)を酵素により糖化するに当たり、セルラーゼ注2)高産生菌として知られている糸状菌トリコデルマの1種Trichoderma reesei(以下、T. reesei)に変異を加えることで、糖化比活性の高いセルラーゼを産生する菌株の獲得に成功した。

  • UV照射や亜硝酸浸漬及びその組み合わせによる変異処理をした菌体培養液を希釈培養し、変異株を取得した(図1)。各種の変異処理をした菌株は野生株と同等の粗酵素(主にセルラーゼ)産生能を示した。各種の変異株培養によって得られるセルラーゼの糖化能を調べるため、a-セルロースを基質として30℃で1時間、酵素による糖化を行い、産生セルラーゼの糖化比活性を求めた(図2)。
  • T. reesei にUV照射及び亜硝酸浸漬による変異処理を組み合わせることで、産生されるセルラーゼの糖化比活性が向上し、T. reesei 野生株からの酵素に対して約1.8倍、市販酵素(C1.5L注3))に対して約2.2倍の糖化能を備えた高活性セルラーゼ(MT100UN)を取得した。更に糖化活性の高い酵素を産生する優良株の獲得を目指して、研究を継続中である。
図1 T. reesei 変異処理によるセルラーゼ産生株の獲得 ・カルボキシメチルセルロース(CMC)を含むポテトデキシトロース寒天(PDA)培地で培養 ・CMCを分解することで、染色されずハローが形成される

図1 T. reesei 変異処理によるセルラーゼ産生株の獲得
・カルボキシメチルセルロース(CMC)を含むポテトデキシトロース寒天(PDA)培地で培養
・CMCを分解することで、染色されずハローが形成される

図2 セルラーゼの糖化比活性 WT:T. reeseiの野生株、MT100UN:UV照射+亜硝酸浸漬変異株、 MT100NU:亜硝酸浸漬+UV照射変異株、MTN:亜硝酸浸漬変異株

図2 セルラーゼの糖化比活性
WT:T. reeseiの野生株、MT100UN:UV照射+亜硝酸浸漬変異株、MT100NU:亜硝酸浸漬+UV照射変異株、MTN:亜硝酸浸漬変異株

注1):植物の細胞壁の主成分で、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを含む、注2):セルロース分解酵素
注3):Novozymes社、Celluclast® 1.5L (1,4-(1,3:1,4)-β-D-グルカン 4-グルカノヒドロラーゼ)

応用例・用途

  • セルラーゼ高産生菌T. reesei にUV照射と亜硝酸浸漬を組み合わせた変異を加えることで、高活性セルラーゼを産生する菌株を得ることが可能となる。
  • 取得したセルラーゼは、セルロース系バイオマスからのエタノール生産の糖化工程に利用可能である。

研究施設

  • インキュベータ、電気泳動装置、PCR計、分光光度計、質量分析計(LC-MS/MS)、クロマトグラフ(HPLC、FPLC)、凍結乾燥機、ファーメンタ、高速遠心分離機、オートクレーブ、恒温室、安全キャビネット、フリーザ(-80℃、-20℃)