ESP32-PICO-D4によるアダプティブアンテナ技術のWeb Radioへの適用
整理番号:2018-004
研究者名: 小寺 敏郎(Toshiro Kodera)
所 属: 理工学部 総合理工学科 電気電子工学系 教授
専門分野:マイクロ波デバイス・アンテナ工学
キーワード:ビーム切り替え、アダプティブアンテナ、SiP、ESP32、Web Radio
研究概要
IoTエッジデバイスの急激な普及により、無線LANにおける通信がさらに混雑することが想定される。この問題の解決策の1つとしてアダプティブアンテナ技術が果たす役割は大きい。複数のアンテナ素子を配列することで、妨害となる干渉波がある環境においても信頼性の高い安定した無線通信を実現できる。しかし、事前にアンテナの放射特性が得られていても、見通し外環境での電磁波伝搬は非常に複雑で予測不可能であり、良好な通信を行うためにはアンテナの指向性の調整が重要となる。今回、Espressif社のESP32-PICO-D4 SiP (System-in-Package)チップを活用し、電波伝搬状況に応じてアンテナ素子を選択するデバイス、Web Radioを設計したので、ここに紹介する。
・7ミリ角に全てを搭載
図1 ESP32-PICO-D4 SiPの内部構造
システム構成としてアンテナ以外のすべてのコンポーネントを含んでいる。
オンチップRFシステム
SoC SIP module ESP32 with 4MB Flash, Dual Core MCU, RF(WiFi/BT) 周辺回路
・効率的な指向性の制御が可能
図2 ビーム切り替えアンテナの構造と測定結果
3本のアンテナ素子を配置し、放射パターン、水平偏波を測定した。互いに他のアンテナのヌル点を補完できるため、伝播環境に応じてアンテナを切り替えることにより、効率的な指向性の制御が期待できることを実証した。
・Web Radio への適用
図3 Web RadioのPCBレイアウト
アンテナ部をESP32-PICO-D4のWeb Radioシステムに統合。SP3T RFスイッチ、誘電体アンテナ、ハイレゾオーディオDACを搭載したWeb Radioシステムの完成サイズは50×50mm。
・電波伝搬状況に応じて最適なアンテナを選択
図4 ビーム決定の手順
起動時に、先ずアンテナ選択プロセスが実行される。アンテナ毎に与えられたSSIDに対してRSSI(受信強度)を取得して、最大値が得られるアンテナ素子を仕様素子として決定した後、Web Radioのアプリケーションが始動する。
http://dx.doi.org/10.1016/j.ohx.2018.03.001
にて論文入手可能。
応用例・用途
- テレメトリーシステム、ヘルスケアモニタリングシステム、スマートスピーカー等にも適用可能。
研究設備
- 電子回路プリンター、ネットワークアナライザー(50GHz)、デジタル変調評価器、各種信号発生器(50GHz)、放射パターン測定装置、マイクロ波基板加工機、3Dプリンター等