草木質バイオマスからの高効率エタノール生産技術の開発
~亜塩素酸塩処理と重曹熱処理による稲藁の前処理~
整理番号:2016-068
研究者名: 田中 修三(Shuzo Tanaka)
所 属: 理工学部 総合理工学科 環境科学系 教授
専門分野: 環境技術・環境材料、土木環境システム、応用微生物学
キーワード: リグノセルロース系バイオマス、糸状菌トリコデルマ、セルラーゼ、変異導入
研究概要
草木質系バイオマスは賦存量が多く且つ食料・飼料の供給と競合しないバイオエタノールの原料となるが、草木質成分であるリグノセルロースは糖化されにくい構造であるという欠点を持っている(表1)。更に、セルロース繊維の剛構造を破壊する必要がある。そこで、我々は、草本系バイオマスである稲藁を原料として、エタノールに転換されないリグニンの除去並びにセルロース繊維の結晶性の低減と結晶型の改変に関する研究を行い、良好な結果が得られたので、以下に紹介する。
稲藁の亜塩素酸・重曹法による前処理
- ブレンダ―粉砕稲藁(図1)を酢酸酸性域で亜塩素酸ナトリウム処理(亜塩素酸処理)によってリグニンを可溶化させ、除去できることを見出した。
- 粉砕された稲藁を亜塩素酸処理することにより漂白され、その後重曹熱処理することによってパルプ状になり、膨潤した微細繊維(ミクロフィブリル)に変化していることが明らかとなった(図2及び図3)。
- 開発した亜塩素酸・重曹法により、稲藁のリグニンを88%除去することが可能となり、工業用セルラーゼによる50℃、12時間での糖化の場合、無処理稲藁の糖化率20%に対して、96%の糖化率を達成した(図4)。図2中の3回ASC+SBを使用して行った実験の結果である。
表1 リグノセルロースを構成する成分組成
脚注
・ASC:亜塩素酸ナトリウム処理、SB:重曹処理
・Avicel:Nobozyme社celluclast及びNobozyme 188によるアビセルセルロース(微結晶セルロース)の糖化
応用例・用途
- 草木質系バイオマスを亜塩素酸・重曹法による前処理を行うことで、効率の良い糖化が可能となる。
研究施設
- インキュベータ、電気泳動装置、PCR計、分光光度計、質量分析計(LC-MS/MS)、クロマトグラフ(HPLC、FPLC)、凍結乾燥機、ファーメンタ、高速遠心分離機、オートクレーブ、恒温室、安全キャビネット、フリーザ(-80℃、-20℃)