非可食性バイオマスポリマーを原料とする機能性ナノ材料の創成 (環境科学系 吾郷 万里子)

非可食性バイオマスポリマーを原料とする機能性ナノ材料の創成

整理番号:2019-003


研究者名: 吾郷 万里子(Mariko Ago)
所  属: 理工学部 総合理工学科 環境科学系 特任准教授
専門分野:木質科学、コロイド科学、材料科学、高分子科学
キーワード:バイオマス、リグニン、ナノ粒子、ナノセルロース、ナノファイバー、複合材料、エマルション、コロイド、電極材料

 研究概要

木質成分に由来するセルロース,ヘミセルロース,リグニン等を非可食性バイオマスといい,このうち,リグニンは,天然から得られる唯一の芳香族性ポリマーであり,生分解性樹脂原料として,また炭素繊維の原料として期待されています。しかし,リグニンの分子構造が複雑なことから,材料用途への応用が難しく,産業的には大部分が燃料用途としてサーマル利用されているにとどまっています。本研究室では地球温暖化対策,化石燃料代替への解決に向け,再生可能資源である木質バイオマス・リグニンを新しい原料として利用するための技術開発を行っています。ここでは,リグニンを用いたナノ構造体(ナノ粒子やナノファイバー)の開発に成功したので,その用途展開を併せてご紹介します。

(1)安全で高性能なリグニンナノ粒子の開発

生分解性ポリマーであるリグニンを用いて安全で高機能なナノ粒子の開発に成功しました。リグニンナノ粒子はエマルションの安定化剤として,水/油界面においてすぐれた乳化作用を示しました。この他,様々な機能を有するリグニンナノ粒子の開発を行っています。

安全で高性能なリグニンナノ粒子

(2)リグニンを用いたカーボンナノファイバー開発とフレキシブル電極素材の開発

従来繊維状に加工するのが難しかったリグニンですが,なじみのよい可塑剤を少量加えること,エレクトロスピニング法を用いることにより,リグニンナノファイバーマットを合成することに成功しました。さらに炭化処理技術によってメソポアカーボンマットとして,フレキシブルで高容量なスーパーキャパシタンス用電極材として機能することを明らかにしました。更なる高容量化,高寿命化を実現する研究を行っています。

フレキシブルカーボンマットスーパーキャパシタンス

希望する連携内容(共同研究、試作品作りなど)と相談に対応できる技術分野

  • ナノファイバー、ナノ粒子の合成/セルロースナノファイバー、ナノクリスタルを原料としたポリマーコンポジットの合成と物性評価/エアロゲル、エマルションの安定化等の物性評価/電極材料評価

応用例・用途

  • 選択的ガス吸着剤/センサー、導電性ポリマーナノコンポジット、界面活性剤、表面処理、接着剤

特記事項

  • 代表論文: Ago, M. et. al. High-Throughput Synthesis of Lignin Particles (∼30 nm to ∼2000 nm) via Aerosol Flow Reactor: Size Fractionation and Utilization in Pickering Emulsions. ACS Appl. Mater. Interfaces 2016, 8 (35), 23302–23310.; Ago, M. et. al.,. Supramolecular Assemblies of Lignin into Nano- and Microparticles. MRS Bull. 2017, 42 (5), 371–378.