アルミニウムの水平リサイクルに向けた現場計測技術の開発
整理番号:2017-004
研究者名: 上本 道久(Michihisa Uemoto)
所 属: 理工学部 総合理工学科 環境科学系 常勤教授
専門分野:分析化学、無機化学、環境動態解析、リサイクル
キーワード:アルミニウム合金、可搬型蛍光X線分析装置、現場分析、リサイクル
研究概要
資源枯渇および省エネルギーの観点からアルミニウムの循環利用が希求されているが、リサイクル率は3割程度に留まっている。スクラップヤードでの迅速な化学計測により合金種別を判別することができれば、混合して溶解することなく高級材であるアルミニウム展伸材としての再利用が可能となる。
本研究室ではスクラップ現場に持ち込むことの可能な可搬型(ハンドヘルド型)蛍光X線分析装置による、アルミ展伸材スクラップの相互識別の可否について検討し、その有効性を確認した。
- アルミニウム合金標準試料を用いた、バルクFP法による種別判定のための測定条件の検討
- サッシスクラップ試料を用いた実験
- リサイクルヤードでの測定
- 可搬型XRFを用いて大気中でアルミ合金展伸材試料の測定を行い、合金標準試料の 種別判定に成功した(表1)。
- スクラップ試料でも判定は可能であった。
- 軽元素であるSiおよびMgの測定の可否が判定には重要であることがわかった(図1)。
- 試料の不整形状や表面状態(形状、塗装)に応じた、測定パラメータの調整により識別精度を向上できる。
従来技術に比べての優位性
目視や用途調査による分別に代わり、現場での化学計測により単一スクラップとしての分別が可能となることで、市場価値が飛躍的に高まるものと期待できる。
今後の展望
本技術は、他の高付加価値合金(マグネシウム合金、貴金属合金)スクラップにも適用できる可能性が高い。今後、産業界と連携して研究を進めていく。
図1 アルミの主ピークの近傍にあるSi及びMgのXRFスペクトル | 可搬型蛍光X線分析装置による現場分析 (塗料剥離後に測定) |
表1 アルミサッシに使われている合金とスクラップ分析での判定結果
応用例・用途
- スクラップ取引の際に添付する信頼性を有する測定値と判別結果を提供
研究設備
- 高速液体クロマトグラフ(HPLC)、原子吸光光度計(フレーム、ファーネス共用)
- 熱分析装置、湿式化学実験室